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山形県の探訪記録について 


【 山形県の探訪記録作成と佐藤リスト 】

 山形県は古四王神社の所在地に関する情報の数が最も多い県ですので、この県の探訪記録作成にあたっては、記載順等についての方法を検討しなければならないと思います。
 山形県の古四王神社の所在地情報については、《桑原リスト》に58箇所と参考3箇所の計61箇所があげられており、《佐藤リスト》においては神社所在地41箇所と地名所在地27箇所の31地名があげられております。
〈《桑原リスト》《佐藤リスト》については[所在地リストについて]の記事中にも記させていただいております。〉
 《桑原リスト》には、神社の情報と地名の情報が混在しており、分布を示すための情報として「採用したものの中にもコシオオとの関係を否定されなければならぬものもあるかも知れないが、特に否定説のないものは全てあげることにした。」という方針により58+3の情報数になったものと思われます。
 これに対して《佐藤リスト》は、「まずコシオウを冠する神ないし社の存在を抽出し、コシオウの地名だけの遺存とは峻別することにした。」「五所神社(あるいは御所神社)や北向薬師などをコシオウとの関わりで理解する指摘もあるが、充分な論証は早計とみて割愛した。」という方針によって、山形県のコシオウ神社所在地41と山形県のコシオウ地名所在地27(31地名)を区別しています。神社所在地と地名所在地を合わせれば68箇所72情報になります。

 《佐藤リスト》と呼ばせていただいております所在地情報は、佐藤禎宏『コシオウ信仰研究序説』に記載のコシオウ所在地情報であり、それは「第1表 山形県域のコシオウ神社所在地」と「第2表 山形県域のコシオウ地名所在地」及び「第3表 山形県以外のコシオウ神社所在地」の3つの一覧表にされており、この表を地図に落とし込んだ山形県域の分布図と東北地方と新潟県の分布図の2図が載せられています。
 佐藤は、山形県域のコシオウ神社所在地に1番〜41番の番号を付け、山形県域のコシオウ地名所在地に42番〜68番の番号を付けています。この番号は、所在地情報を神社所在地情報と地名所在地情報に分けた上で、庄内地方・村山地方・置賜地方の市町村の順に、概ね北から南の順に並べて番号を与えたものです。
 このことで分布図の位置と番号に規則性を与え、付与した番号を位置番号として、その位置番号の順に所在地情報を一覧表にしています。その位置番号順の一覧表が分布図上の位置と対応して、所在地情報の分布確認を分かりやすくしてくれます。
 佐藤によって所在地の情報が地図上にしるされることで、情報が吟味・検討されて、情報に整理された番号が付与されることになり、すぐれた所在地情報になったと思います。
 この佐藤リストは、山形県の古四王神社の所在地情報として最も整理分類された最良のものと思います。

 佐藤は『コシオウ信仰研究序説』の『三、コシオウ神社とコシオウ地名の分布』のなかで「コシオウ神社を分布論の進捗から概観すると、最初の指摘は進藤重記であり…。点を面にしたのは菅江真澄で…。これが本格的な形で問題提起されるのは、昭和初年のことで喜田貞吉によるもので…24ヶ所のコシオウ神社を列挙している。それは大山宏が大正14年12月に秋田魁新聞に連載した22ヶ所を下敷としたものであった。…〈喜田論考を受けてコシオウの〉新資料の紹介が直ちに増村卯助・丸山茂などによってなされている。…山形県内所在のコシオウ神社を25ヶ所まで数え、コシオウの地名に注目したのは川崎浩良であった。さらに最上川以北の庄内地方、特に遊佐町におけるコシオウ神社を詳細に調査したのは池田宗機である。こうして山形県域のコシオウ神社はほぼ採取されていき、最新の例としては月光善弘による集成と補足がある。県外においては新潟県での進展がある。その先鞭は小林存が喜田の刺激を受けたことによる。しかし喜田系譜とは別個に横山貞裕がコシオウ神社に関心を寄せていた。…これらを集成する作業として及川大渓の著作があるが、及川は横山の成果を吸収してはいない。また同様の仕事に桑原正史の労作がある。月光と桑原の論考はこれまでのコシオウ神社をほとんど採録しており、分布問題については到達点を見せている。」と分布に関する進展の概要を記述しています。
 佐藤はこれに続けて「本稿の分布図作成にあたっては、上記諸氏の論報を参考とし、これに友人の情報を加味したものである。しかしながらこのように一見豊富な資料があるにもかかわらず、分布図の作成には困難が伴った。そのほとんどが旧地名で記載されているばかりでなく、コシオウ神社とコシオウ地名が混同していたり、同一神社の重複があったりしており、それらの現在の所在地名と地図への挿入は簡単ではなかった。まずコシオウを冠する神ないし社の存在を抽出し、コシオウの地名だけの遺存とは峻別することにした。」と記して《佐藤リスト》の成り立ちについて述べています。
 所在地情報から分布図を作成することの困難さは、神社の所在を探して実際に訪ねる探訪の難しさと同じではないでしょうか。
 趣味で行なう探訪の場合は簡単にすぎれば面白みもないと思いますが。

 桑原論文や佐藤論文に示された山形県の古四王神社に関する情報数は、大正末に大山宏の提示した所在地情報では山形県の情報数が6箇所であったことからすると、著しい増加になります。
 佐藤の記した分布に関する進展の概要においても記されておりますが、これは山形県の研究者の方々のなされた成果です。
 この概要では、私がこの探訪記録のなかで取上げた方々について説明をしていただいておりますが、概要ですので全てを記載できるわけではありませんし、月光や及川に関するとらえ方などに違和感のある点もあります。

 古四王神社の探訪記録の作成は、これらの方々の諸論文に示された神社所在地に関する情報を確認し、所在地確認・分布確認につなげる記録になります。
 それゆえ、各論文については論旨よりも情報源として見てしまいがちになり、申し訳なく思っておりますが、論文に関しては所在地情報を中心にした取上げ方をしております。
 佐藤は分布問題とも関連するコシオウ研究史の概要について『コシオウ信仰研究序説』の『二、コシオウ信仰研究史上の問題点』で論じておりますが、ここで取上げることはいたません。

 私の山形県の古四王神社の探訪は、《桑原リスト》に基づいて所在地情報を市町村別に整理してまとめて、行けるところから少しずつ訪ねて現在住所確認や、図書館で文献資料の情報を探す等のことを行なってきています。
 そのなかで、桑原リスト以外の所在地情報を得ることできました。

 今のところ〈2017年10月現在〉《佐藤リスト》によって知ることの出来た山形県の古四王神社の所在地情報は山辺町北山の古志王神社以外には無いのですが、佐藤リストは山形県の古四王神社の所在地情報として規則的に整理された最良のものと思いますので、この成果と無関係には山形県の探訪記録の作成はあり得ないと思います。

 山形県の探訪記録は、佐藤リストの「第1表 山形県域のコシオウ神社所在地」の1番〜41番の番号の順番に応じて記載していくのが良いのではないかと思います。 
 しかし、山形県の古四王神社の探訪先は佐藤リストと同じではないこともありますので、この探訪記録のための番号を設けることにし、その番号と佐藤リストの番号との関連を示すようにしたいと思います。

 佐藤リストに取上げてあっても、神社又は地名の所在地情報として疑問に思えるものはその旨を記述したいと思います。
 桑原リストに参考と記した例がありますので、桑原リストの所在地情報及び他のリスト分を含めて、所在地情報として疑問のものは参考情報とした方がよいのではないかと思います。
 古四王の所在地として疑問であっても、所在地リストから外すのではなく「参考」という区分を設けて情報を残したいと思います。

 また、山形県には神社所在地情報が多くありますので、山形県の古四王神社の探訪記録は、山形県では県内を四つの地方に分けることが行なわれておりますので、庄内地方・置賜地方・村山地方・最上地方に分けて地方ごとに記述していきたいと思います。
 最上地方には今のところ所在地情報がありませんので、庄内・村山・置賜の3地方の探訪記録として、庄内1・庄内2・・・、置賜1・・・、村山1・・・というような地方ごとの番号を付けて、そのうえで山形県全体を通した番号も付けたいと思います。


【 山形県の四地方ー庄内・村山・置賜・最上 】
 
 山形県の海岸側の地域が庄内地方で、内陸部は庄内地方に接して北部が最上地方、中部が村山地方で、その南に置賜地方の3地域があります。
 それぞれの地方の範囲を自治体で示すと以下です。
 庄内地方の自治体は、北から飽海郡遊佐町、酒田市、東田川郡庄内町・三川町、鶴岡市の2市3町ですが、平成の大合併前は14市町村でした。
 平成の大合併により、飽海郡八幡町・平田町・松山町が酒田市に合併しあらためて酒田市が発足し、東田川郡余目町・立川町が合併し庄内町になり、東田川郡三川町は三川町のままで、東田川郡藤島町・羽黒町・櫛引町・朝日村と西田川郡温海町が鶴岡市と合併しあらためて鶴岡市が発足しています。
 平成の大合併以前の市町村の変遷はここでは取上げません。
 庄内地方以外の3地方は、平成の大合併で合併した市町村はありません。
 置賜地方の自治体は、米沢市、東置賜郡高畠町・川西町、南陽市、長井市、西置賜郡白鷹町・飯豊町・小国町です。
 村山地方の自治体は、山形市、上山市、天童市、東根市、尾花沢市、村山市、寒河江市、北村山郡大石田町、東村山郡中山町・山辺町、西村山郡大江町・朝日町・西川町・河北町です。
 東根市・尾花沢市・村山市・大石田町の4市町村が村山地方の北部にあたり、寒河江市・河北町・西川町・大江町・朝日町が村山地方の西部にあたり、天童市・山形市・上山市・中山町・山辺町は村山地方の東南にあたります。
 最上地方の自治体は、新庄市、最上郡金山町・最上町・舟形町・真室川町・鮭川村・戸沢村・大蔵村です。

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